Hang In There

蔵王の麓で新聞屋さんが子どものこととか震災のこととか思い出などを綴ります

伊坂幸太郎『重力ピエロ』2006,新潮文庫 −ミステリー小説キャンペーン

重力ピエロ (新潮文庫)

重力ピエロ (新潮文庫)

世の中は教科書通りにはいかない。定規で引いたような真っ直ぐな線のように生きることはできない。僕らは誰しも、どこかしら歪んでいる。生きているだけで、いや時には生まれる前からも、僕らは否応無く矛盾や不条理な出来事にぶつかり、少しずつ歪んでしまう。
歪みをできる限り矯正し直線に近づけることが教科書や定規の役割だとしたら、その歪みを受け入れ許容し飲み込むことが人間らしさなのかも知れない。


とてつもなく大きな歪みを抱えた兄弟と、その父親。最強である兄弟は、それぞれに歪みの原因に立ち向かっていく。癌に侵され病床に伏せている父親はそうした2人の全てを許容するのだった。


全てが終わり、兄弟を見つめる父親の姿に涙があふれた。そして、僕はこんなに大きな父親になれるのかと、自問する。仕事においても社会においても凡庸を絵に描いたような人生を淡々と過ごしながら、大いなる愛情を持ち、辛い矛盾も笑顔で迎え入れるような、そんな大きい父親に僕はなれるのだろうか。