Hang In There

蔵王の麓で新聞屋さんが子どものこととか震災のこととか思い出などを綴ります

僕らは今、奏でている

1月3日、サマーウォーズと一緒に、ソラニンソラニン | アスミック・エース)も借りた。
サマーウォーズ+α→乙 - Hang In There
ソラニンは、実は映画館で一度観ている。宮粼あおいが歌う劇中歌「ソラニン」を、どうしてももう一度聴きたかったのだ。

ASIAN KUNG-FU GENERATIONを聴いてみようとしたときは、ちょうどその曲「ソラニン」が発売された直後で、導かれるようにそのシングルを買った。そして、その曲は同名の映画の劇中歌であり、更には映画の中で宮粼あおいが歌うことを知った。

映画が公開されてしばらく経ったある日、ちょうど映画館の近くに出かけることになり、何とか映画の時間を空けられなくもなかった。(一般にそれをサボりと言う)

開始時刻を過ぎてシアターに入ると、もう既に本編が始まっていた。入り口近くに確保した席を急いで探し、音を立てないよう周りに気遣いながら着席する。
(実は、見終わった後、客は僕一人だけだったことを知る)

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とにかく、音楽をテーマにした映画が好きな自分に気づいたのは、ビョークが主演した映画「Dancer in the dark」を観たときだ。
映画のサントラとは知らずにアルバムを買い、ひっきりなしに聴いていた影響もあるだろうが、ビョークの素敵な歌声と曲がストーリーのそこかしこに散りばめられ、まるで壮大なプロモーションビデオを観ているようだった。あっという間に映画が終わってしまい、夢中で観ていた自分に気づくとともに、胸の高鳴りを抑えきれなかった。
どうも、僕にとってストーリーは完全に副次的なものであり、音楽を引きたてる一要素に過ぎないようだった。実は、この映画はストーリー的に賛否両論に分かれるような内容であり、深刻なテーマだったのだが、なんとなくしか覚えていない。
ストーリーの根幹を揺るがす重大な解釈違いをしていたことからも明らかだ。この勘違いは、一緒に観にいった当時の彼女をひどく怒らせ、二日ほど口もきいてもらえなかったほどだ。

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その後、レンタルで「Sound of music」を観たときも、同じような感想を覚えた。ミュージカル仕立てでなくても、Symphony Home Coolerのように音楽の才能を持った少年の話とか、天使にラブ・ソングを… - Wikipediaとか。一般に、音楽をテーマにした映画ってストーリーに批判が多かったりするのだが、関係なし。
しかし、生のミュージカルで感じたものは全く違うものだった。ミュージカルは、僕の中ではあくまで「音楽で表現する演劇」であり、上述の映画は「映像とストーリーがある音楽」なのだ。(かと言ってミュージカルが嫌いなわけではなく、むしろ大好きです)

考えてみると、どうも僕の頭の中には常に音楽が流れている。
歩くたびにリズムが走り出し、楽しいときには楽しい旋律が、辛いときには辛い旋律が駆け巡る。
どこかで聴いた曲が流れることもある。が、どちらかというと耳で聴こえるような具体的な音程とかリズムではなくて、心が感じる色というか雰囲気というか印象のようなもので、音楽に感じるものとどこか似ているのだ。

上述の映画の中で、僕は曲の印象を映画の中で味わっていたのかも知れない。それは電車に乗り窓からの街並みを眺めながらヘッドホンで聴くよりも、もっと強烈で明確な印象に思える。単に音楽を聴くよりも映画を観るよりもずっと強烈な、異世界へのトリップなのだ。

そう、僕らは今でも音楽を奏でている。
歩けばそのステップはリズムになり、キーボードの音はパーカッションになり、人々の声は様々な音色を出す管楽器の多重奏になり、青い空は爽やかな弦楽器の伴奏となり、シトシト落ちる雨音は切ないフレーズを奏でるピアノになる。その上に、気持ちという旋律を乗せるのだ。

そんなわけで、宮粼あおいが歌う「ソラニン」をどうにかしてiPhoneの着メロにできないかなあ、と今日もぼんやり考えている。