Hang In There

蔵王の麓で新聞屋さんが子どものこととか震災のこととか思い出などを綴ります

耐寒の体感はココア味

昨日は、午後から息子と二人でスキーへ。

みやぎ蔵王白石スキー場スノーシーズン-スノーシーズントップ

一昨年、息子と二人でこの白石スキー場に来たことがある。その時は、二人でソリで遊んだ。今回は、息子のたっての希望でスキーをば。

僕としては、実に10年ぶりのスキーである。もう少し記憶を辿ると、最後のスキーからおそらく12年経っている。しかも、最後にスキーをした際、20歳の大学生というピッカピカの若者にも関わらず、「高校のときより体がうまく動かないよ!滑れないよ!」と嘆いた覚えがある。
なんと、まもなく33歳を迎える運動不足&やや肥満気味のアラサー男子に、生まれて初めてスキーを履く5歳の息子がついてくる。無理だ。いや無理でなくてもかなり厳しい。そう考え、出発を14時前にした。これなら、長くても2時間耐えればスキー場が終わる。2時間なら何とかなる。

先週ゴーグルを買ってやった息子はテンションMAXで、家の中で既にフル装備である。一方僕は、妻からもらったネックウォーマーと雪かき用手袋の他は全くの普段着。ともかく今日のところは、白石スキー場のレンタルに頼るほかない。

ゲレンデに出ると、既に吹雪いていた。この時点で息子の体力ゲージはマイナス気味。
最初にスキーを履いてみる。これがまた難関だった。スキーがどういう形で足に接続されるかの予備知識ゼロだったのがまずいけない。そして体重が軽いため、踵がなかなかハマらない。
更には吹雪である。平らなところでチャレンジしていたが、横風に流されてどうしてもバランスを崩す。ストックの使い方についても何の知識も無く、立ち上がれない。更には、大声を出してもなかなか聞こえない。息子体力ゲージは更に下降する。

とりあえずスキーを装着させ、山と谷という呼び方と、基本的転び方、そしてスキーは「ハ」の字であることを伝え、少し上から滑ろうと横歩きさせる。しかしまた吹雪にあおられ、横歩きもままならない。息子の体力ゲージは更に下降するが、もっと深刻なのは「やる気ゲージ」の低下だった。

このまま、スキーが楽しくないものとして息子の心に刻まれたとしたら、彼はこの先ずっとスキーの機会を失っていくだろう。つまりはスキーの楽しさを理解する機会を失うのだ。それは、本当にもったいないことだ。そして、そうなるかどうかは、今まさに僕の行動にかかっているのだ。

そこで、リフトに乗ることにする。息子は高いところが好きだ。父親とはその点で価値感に大いなる差がある。
乗った当初は喜んだものの、「足が震える」と言い出した。徐々に体が冷えてきたのだ。だが、すぐ温まるだろう、そう考えていた。

上から、息子を前に抱きかかえたまま滑る。
久々のスキー。でも基本は全く忘れていなかった。ボーゲンで適度な速度調整をしながらゆっくりとスラロームする。隣を滑る小学生への気配りも忘れない。「おおおををを!俺、やれるじゃん!」そう思った束の間、腰と太ももと膝が悲鳴を上げた。

ありえない程の中腰である。自分の膝でも触れそうなくらいの前傾姿勢。
しかもスラロームをするために、やや膝を曲げている。太ももがプルプル言う。エッジを効かせるたびに、外側の膝に更なる負荷が。
息子は支えないと転んでしまう。太ももは息子の17kgの体重を支え続けている。
吹雪は止みそうもなく、風に注意しながら下へ下へと滑る。
息が切れている。体中から汗が出る。しんどい。初心者用のゲレンデがものすごく長く感じた。
その間、息子は大感激である。
「俺、スキー滑ってるうぅぅー!」
その声を聞けば、疲れも吹き飛ぶ!

はずもない。


聞けば、息子はもう一度滑るという。リフトに乗ると、今度は体まで震えだした。口から寒いという言葉が出た。真冬の部屋で裸足でいても寒いとは言わない息子だ。かなり寒いに違いない。そこで、これを最後にレストハウスに戻ることにした。
(助かった)
正直な感想である。

息子は食堂で震えていた。温かい飲み物を買おう、と自動販売機に行くと、息子が飲めそうなものはココアぐらいしかなかった。
息子は美味しそうにココアを飲む。iPhoneを取り出して写真を撮ろうとすると、息子は精一杯の笑顔を向けてくれた。成長したなあ。

帰りの車中、体が温まった息子は上機嫌だった。
「また行こうね」
こんな吹雪の中、震えるような寒さの中、スキーの楽しさを感じ取った息子に天晴れと言いたかった。それでいい。楽しいのが一番だ。連れてきて良かった。頑張って良かった。本当に良かった。
そうだね、また行こう。
また、行こう、か。
うん。
あれ。
あまり気が進まないぞ。

背中に冷たい汗を感じたのは、帰りの下り道がずっとアイスバーンだったから、だけではあるまい。
口の中は、さっき飲んだココアの味。

そんなわけで、今日はまず腰からきた筋肉痛と、太ももから尻にかけての筋肉の張りに耐えるのだった。