Hang In There

蔵王の麓で新聞屋さんが子どものこととか震災のこととか思い出などを綴ります

"Airbag" - Radiohead, 1998

既にこのとき、Radioheadは1st Album「Pablo honey」に収録された「Creep」によって、世界のメジャーなロックバンドの一つだった。そしてこの「Airbag」が収録されたアルバム「OK Computer」によって、Radioheadは世界のトップバンドとしての地位を不動のものとする。Radioheadのすごいところは、その地位をいともあっさりと捨ててしまうところにあるのだが、それはまた別の話。

僕はといえば、96年に大学に入り、NirvanaやExtreme、GNR、Aerosmithレッチリなど多くのロックバンドを聴くようになった。その中にRadioheadがあり、聴けば聴くほどCreepのトリコになった。

たった3つのコードでつくられたその曲は他のどのバンドの曲とも違う悲しさが漂っていた。「何とかなるさ、楽しくいこう」「辛く悲しいことはあってもいつか報われるさ」そんな、人間の陽の部分から生まれた曲が多い中で、Creepは完全に絶望から出発している、そんな風に思えた。人間に存在するダークな部分をそのまま出した、そんな気がした。アルバム全体としてみても陽の曲が多く、Creepは本当に異端児だった。

Radioheadの、陰から生まれる曲への挑戦は2ndアルバム「The Bends」でも続く。そしてその集大成が3rdアルバム「OK Computer」であった。

忘れもしない、当時持っていたCDラジカセにセットして1曲目「Airbag」を聴いた瞬間。これまでのどんな曲とも違う異質な音楽への「何だこれは?」という気持ちと、それに強く惹かれる自分への「何故これがイイんだ?」という気持ち。
陰から生まれた曲のはずなのに、心に強く響く。気持ちが軽くなることも、熱くなることもなく、それでいて激しい。
僕の中では、ひょっとすると人生を変えた一曲ではないか?とも思える衝撃だった。

今でも、良くAirbagを聴く。そして、世界を変えるというのはこういうことなんだな、と改めて思う。

そんなわけで、会社の車を運転していると、ついハンドルの「AIRBAG」の部分が気になって撫でてしまう。そして時々「プッ」とクラクションが鳴ってしまい、取り消すわけにもいかず、周りの車にひたすら頭を下げていたりする。クラクションのあとに必死に頭を下げてるヒゲのおっさんを見たら、優しく見守ってくれれば良いと思う。