Hang In There

蔵王の麓で新聞屋さんが子どものこととか震災のこととか思い出などを綴ります

18Months.

今僕の目の前にあるiPhone 3GSに替えたのは去年の4月だから、こやつは娘の成長をずっと追いかけている。年の離れた妹にどこか嫉妬を感じつつも、少しずつ可愛がることを覚えていく息子の姿と、母親として女性としてまた新しいステージに進もうとする妻の姿を、ずっと追いかけているのだ。


保存されっぱなしの写真を眺めると、最初は息子が年中組として初めて登園する朝、玄関前で白く冠雪が残る蔵王をバックに撮影したものだ。それから、季節外れの大雪や授業参観の様子であるとか、3人家族として行った最後の花見の光景となり、出産を迎える。
生まれたばかりの娘の写真に交じって、遊んでいる息子の写真がある。この頃、僕は自分自身の中に「二人とも愛せるのか」という命題を背負っていて、二つの命にどう愛情を注ぐべきかを探っていたのだった。結果的には、何も考えることはなかった。僕は息子を愛でるように娘を愛することができたし、時折叱ってしまうことはあるけれど、息子に対しても充分な愛情を自分の中に発見することができた。


夏、寝がえりを始める娘と、どんどん活動的になる息子。東京の写真は、息子との激しい喧嘩を思い出させる。今はもう入れない、荒浜の綺麗な砂浜の写真もある。秋、運動会でねん挫した僕の足。山形のリナ・ワールドできょとんとする娘の眼差し。つかまり立ちが始まって、娘と息子が一緒のフレームに入る。冬、外で遊ぶ息子。暖かい屋内で遊ぶ娘。二次会の乾杯を承った友人の結婚式。東北大学工学部建築棟でSSDを受講した。娘は僕の祖母に笑顔を見せる。サンタの服を着た娘とトナカイの息子。ひな壇の前で済ました顔。2月にしては温かい日だった八木山動物園一人旅。ますます成長する娘の動画。
そして、破壊された町並み。遠く離れた避難先からやってきた、自立歩行を見せる娘と、うんていを軽やかにこなす息子の低画質動画。迎えに行った帰りの佐野PA。入園式。絵本の段ボールが山積みの倉庫。


この1200枚あまりの写真が追っているのは、実のところ、僕自身だ。なんてめまぐるしい1年半だったのだろう。果たしてこの1年半は、僕の人生にとってどれほど貴重なものなのだろう。ひょっとすると、1年半だけでは済まないかも知れないし、ずっと後に見渡してみれば、この1年半も何節かに区切れるかも知れない。
iPhoneは、その漆黒の顔でずっと僕を見続けている。