Hang In There

蔵王の麓で新聞屋さんが子どものこととか震災のこととか思い出などを綴ります

テクニカルから解離して

島村楽器のお題「プレゼントしたい楽器」


楽器は、文章以上に自分の気持ちを表現するのが難しい。世の中の多くの楽器は、自由に演奏できるレベルになるまでにある程度の習熟期間が必要だからだ。ピアノ、ギター、ハーモニカ。そして、習熟期間に手本として学ぶ曲に、大きな影響を受けることもまた難しさを助長する。どの分野のどの楽曲に感銘し、そして一所懸命に楽器の練習に取り組むかによって、習熟期間の長短が決まるとともに、その後の音楽人生において弾く曲、生み出す曲の方向性が決まってくる。


僕は大学時代にドラムを経験した。お決まりの通り、好きなバンドのコピーから始まった。なかなかうまくできないし、1曲ができるようになるとその癖のようなものができてしまって、別な曲に影響が出てしまう。それほど真面目に練習しなかったし、従って決して上手と言えるほどの腕前にはならなかったけれど、ひとまずドラムの難しさ、楽しさ、聴き方、などを学ぶ機会があった。今にして思えば、この時聴いていた「リズム」というのは、あくまでテクニカルな「ドラムパターン」でしかなかった。


最近になって、曲そのものが持つ「リズム」にとても心地よさを感じることが多くなった。自分が叩くことを考えるあまり「どうやって叩いているか」に集中していた気持ちが薄れ、曲本来が持つ「ノリ」に感覚を向けることができたのかも知れない。スネアの入るタイミングとは違った部分の「ノリ」や、スウィングが発生させる曲のムードなどを楽しめるようになった。


息子と娘には、とにかく彼ら自身が好きな曲に入っている楽器をプレゼントしたい。そうして好きな曲を奏でようと必死に練習し、あくせくテクニカルに傾倒する時期があっていいと思う。そうしてある程度の期間を経て、研ぎ澄まされた耳と気持ちが解離し、本当に自分が好きな音楽に出会えるときがやってくると思う。


果たしてそれはいつになることやら。