Hang In There

蔵王の麓で新聞屋さんが子どものこととか震災のこととか思い出などを綴ります

曇天模様のエアポート

父が九州へ行った。震災以降、疎開状態になっている祖母を迎えるにあたり、父の妹(僕からすると叔母)一家への御礼と各種打ち合わせをするためだ。


父を空港に送り届けて一人になると、懐かしい空港を久しぶりにゆっくり見てみた。震災以降初めて来た空港。そういえば、暇を持て余した息子を一度連れてきたことがある。飛行機を見よう!と意気揚々と空港ビルへやってきたのだが、イマイチ迫力を感じることができず。後で、近くの公園で見た方が飛行機の音や大きさを感じられて良いと聞き、いつか息子と行ってみたいと思い続けていたのだった。


駐車場から連絡通路に上がるエスカレーターや空港ビル1Fには、津波の到達点を示す表示が貼られてある。あの高さまで、あの勢いで、たくさんの瓦礫や車を巻き込みながらやって来る津波。おそらく僕の想像力はあまりにも稚拙で、実際の凄まじさとは全くかけ離れたものだろうが、それでも心の底から恐怖を感じた。

僕一人なら何とかなるかも知れない。もし、息子と一緒だったら。妻と娘も一緒だったら。父や母と一緒だったら。一人では歩けない祖母と一緒だったら。「不測の事態に備える」とは、「いつも不測の事態に対応できる状況にある」という前提では全く意味が無い。「不測の事態には対応しにくい最悪の状況でも何とかなる方法を考えておく」がその本質であるはずだ。


重苦しくなってしまった気分を少しでも回復させたくて、ちょっとしたお土産を書い、食べログで調べた近くのラーメン屋に寄ってきた。熱くて辛い味噌ラーメンを食べると体が熱くなり、少し汗をかいた。店を出れば曇天模様の空。右を向いても左を向いても現実ばかりがあった。