Hang In There

蔵王の麓で新聞屋さんが子どものこととか震災のこととか思い出などを綴ります

香川真司選手の話

一応小学校から高校までサッカーを続けていたけれど、まあ20年くらい前になっちゃうし、その間に戦術やら練習法やら考え方なんかはずっと進歩しているので、僕のサッカー論など屁みたいなものでして。ただ、万年補欠の小学校時代と、事務処理部長の中学校時代、同様に事務処理部長ならと思っていたらコーチ不在だった高校時代と経験して、選手として分かる部分はあるのかなと思う。


香川真司選手の話


セレッソ大阪からドルトムント、そしてマンチェスターユナイテッドと、怒涛の勢いで出世街道を走る香川は、日本代表でも10番を付け、正に日本のエースとも言える存在だろう。その凄さは、至る所で解説されているので詳しくはそちらをご覧頂きたい。
僕が心底凄いなーと思うのは、「ボールを受けようとする積極性」である。
彼のプレイは基本的にシンプルだ。自チームのディフェンダーがボールを持っているとき、少し前目の位置から左右あるいは後ろに動いてボールをもらい、基本的にワンタッチかツータッチで空いてる選手に返す。ともすれば単なるパス回しでしかなく、それ自体が何か局面を打開することは少ない。しかしそれを繰り返すうちに、テレビ画面には映らない遠くの選手が動いていて、パスコースが生まれてくる。香川か、あるいは香川からのボールを受ける選手がそこを見つけ、局面を変えるパスを出す。そして香川も走る。横で、相手オフサイドラインの裏で、あるいは後ろで、ボールを受けられる位置にとにかく走る。そこでパスが回っても、あくまで香川はシンプルだ。つまらないくらいのシンプルなプレイ。ワンタッチ、ツータッチでリターン、あるいはシュートに持っていく。鮮やかで芸術的でファンタジックなプレイは要らない。ゴールそれが価値。


僕が現役時代、正直パスを受けるのが怖い時期があった。ミスが怖いのである。特に、先輩と一緒にプレイするときはそうだった。もしボールを受けてミスをしたら、そう思うと、ボールをもらうのではなく僕じゃない誰かに良い形でボールが回るように動いてしまう。
でも香川は本当に積極的にパスを受ける。ミスが怖くないのだろうか。おそらく怖いんだろう。でも怖さに心で打ち勝ち、ボールをもらうのである。


もちろん、局面打開のためという面はあるだろうけれど、常にボールに触っているというのは、いざという瞬間に大きな差になる。実際、90分プレイしていてもボールに触っている瞬間というのは多くても一人あたり3〜4分しかない。当たり前だ。22人で4分なら88分である。その3〜4分しか与えられないタッチの間に一瞬のゴールを生むためには、ボールに常に触れている必要がある。何十分も触らずにただ走っているのと、常に数分おきにボールに触れているのとでは、ゴール前での1cmの精度を要求される繊細なタッチには大きな違いが生じる。ゴール前での香川のあの落ち着きは、あのボール回しにあると僕は思っている。そうしたタッチのための運動量を、常に香川は飽きもせず繰り返しているのだ。


なので、香川は素晴らしい。他にも同じようなプレイをしている選手は無数にいるだろうけれど、香川がそれを徹底的にやって、運も味方して、結果こうして日本を代表する選手になっているんだろう。
怖くても前へ!これはサッカー以外にも通づるよなあー。