Hang In There

蔵王の麓で新聞屋さんが子どものこととか震災のこととか思い出などを綴ります

校庭に真っ直ぐ線を引くには

昨日読んだこの記事
http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20110111/217888/

この中で、次のような文章があった。
「企業は、即戦力すなわち総合人間力を求めている」
「非効率で無駄な仕事に意味がある」

反論というわけではないけれど、この文で使われている「即戦力」と「無駄な仕事」という言葉にとても違和感を感じる。

即戦力ってなんだ?
プロスポーツならいざしらず、既存のビジネスモデルが次々と破壊されている今、すぐに戦力になる人材ってどんな人間なんだろう。「チームの中で総合的に力を発揮できる」「臨機応変に対応できる」そんな人間を、果たして育てることができるのだろうか。

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昨年9月に、小学生の親子を対象としたイベントを開催した。このイベントは、およそ1年前に初めて県内で行われた新しいコンセプトのイベントで、もちろん我が店としても初めての経験だった。事前に、他のお店で開催したイベントを見学はしていたものの、僕も妻も初めての経験だったし、とにかく全てが手探りだった。
もちろん僕と妻の二人だけで開催するのは無理だったから、店の従業員さん何名かに手伝ってもらった。その中に、Kさんがいた。
Kさんは、長年勤めていただいている女性の従業員だ。もう還暦を過ぎているが、毎日朝から晩まで良く働き、周囲の皆さんに良く気遣い、手が空けば店を隅から隅まで掃除をし、プライベートではギターとカメラを嗜むというスーパーレディである。
とても気が効く方であり、子どもに応対するには女性の方がいいかもしれない、ということで、今回のイベントへの手伝いを依頼した。といっても、イベントの核となる部分については分担できるほど作業が整理されておらず、結局会場設営と後片付けぐらいしか具体的には依頼できなかった。

当日、午後から会場に入り、開場までのわずかな時間でセッティングを終える必要があった。ところが。朝出社すると、もう一人手伝っていただく従業員さんから報告があった。聞けば、Kさんが朝会場に問い合わせ、午前中にセッティングが可能であることを確認し一人でセッティングをしてしまったらしい。
イベントの最中、消しゴムを忘れた子どもを見るや、すぐに会場の外へ出て消しゴムを調達。しかも、他の子どもと差が無いように、子どもたち全員分の消しゴムを用意していた。

高齢とはいえ初めて携わる種類の仕事であり、Kさんにとっても手探りだったに違いない。しかし、イベントの主旨、最終ゴール地点を明確に理解した上で、自分にできることは何かを常に考えて行動したKさん。これぞ即戦力だと僕は思う。

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多くの企業では、「これをこうすればそれでいい」なんて仕事は少ない。
混沌としている業務の中で、今、自分に何ができるかを常に考えて行動できる人こそ即戦力ではないか。会社の最終目標、すなわちミッションステートメントを実現するための過程として理解するからこそ、今目の前にある「無駄な仕事」にも真剣に取り組むことができるのではないか。

放課後、小学校の校庭で一人、「どうやったら真っ直ぐ線が引けるか」を考えていた。どれだけ注意深く線を引いても、後ろを振り返るとクネクネ曲がっていたからだ。そして遂に、遠く離れた1点だけを見続けて線を引けば、曲がらないことが分かった。必要なのは目の前のことではなく、最終的にどこへ行くかを見定めることだったのだ。

僕が考える即戦力とは、組織の最終目標を明確に理解できる能力、である。

そんなわけで、僕は来月に待ち構えている従業員決起大会の資料をつくっている。しかし、伝える力の無さに呆れており、もうだめぽ、である。