Hang In There

蔵王の麓で新聞屋さんが子どものこととか震災のこととか思い出などを綴ります

"Summer Soft" - Stevie Wonder, 1976

Stevie Wonderで初めて聴いたのは、Innervisions(1973)だった。
まず衝撃的だったのは、これらの曲が20年以上前につくられていたということ。そして、Stevie Wonderは当時20代前半の若者だったということ。極めつけは、Stevie Wonder全盲であるということだった。
モータウンの曲を聴くのは初めてだったが、何というか一発でハマった。R&B、ソウル、ファンク、そういったジャンルの音楽に入り込む入門的なアルバム、かつ最も偉大なミュージシャンだった。
【黄金の4枚】を立て続けに聴いた。「Talking Book」「Fulfillingness' First Finale」「Songs in the Key of Life」。そしてやはり、中でも特に有名な楽曲がお気に入りになった。

You Are the Sunshine of My Life - from "Talking Book"
Golden Lady - from "Innervisions"
Creepin - from "Fulfillingness' First Finale"
Sir Duke, Isn't She Lovely - from "Songs in the Key of Life"

ところが。
聴き続けているうちに、どうにも気になる一曲があった。それは "Songs in the Key of Life" Disk1の9曲目、"Summer Soft" という曲だった。
この曲の良さをいまだにどう表現したら良いのか分からない。
ピアノをメインとした穏やかなイントロからAメロ、Bメロと流れていく。パーカッション・ドラムスが入っても、穏やかさは失われていない。しかし、迫りくる爆発の予感は虎視眈眈とメロディの中に存在し、エネルギーを溜め続ける。1回目のサビがやってきても、エネルギーはまだ十分に解放されず、更に次のチャンスへと成長を続ける。最後、サビを延々と繰り返しボルテージが最高潮を迎えると、エネルギーは一気に解放され、それぞれの楽器が練りこまれたオカズを奇跡のようなタイミングで入れる。

徹夜麻雀からの帰りの車で、何度この曲を聴いただろう。Summer Softを思い出すと、仙台の街に降り注ぐ夏の朝日が今にも香るようだ。「色あせない」というのはこういうことを言うのだろう。しかし、それにしてもSummer Softはマイナーで、Stevie Wonderが好きという人でもすぐに思い出せる人はいなかった。
Stevie Wonderは、僕がこれまで影響を受けたミュージシャンの中で間違いなくトップ5に入る。それ故、着うた対応の携帯に機種変更してから、着信音はずっとIsn't She Lovely一筋。

そんなわけで、今もStevie Wonderは僕のiPhoneWalkmanの中で愛を叫び続ける。久しぶりにIsn't She Lovelyを聴き、赤ん坊の声に自分の娘を想い浮かべてついウルッとなっていたりするが、そんな時はやさしく見守っていただきたい。