Hang In There

蔵王の麓で新聞屋さんが子どものこととか震災のこととか思い出などを綴ります

贈るための順序

ちょっと待って欲しい。物事には順序がある。

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例えば、愛する人の誕生日を考えてみてほしい。


あなたの手元に、以前買ったものの、ほとんど使っておらず新品同様の指輪があったとしよう。買った当初は綺麗だと思ったのだが、あまり使っていないし、使ってくれる人がいるのならその方が指輪も嬉しいだろう。指輪ならいくらあっても構わないだろうし、きっと喜んでくれるはずだ。
そうやってあなたは、その指輪をプレゼントするのだろうか。


きっと何か欲しいものがあるはずだが、分からないので聞くしかない。直接聞くことがどうしてもできないので、誰かに代わりに聞いてきてもらう。欲しいものを、欲しい数だけあげればよいのだ。必ず何か欲しいはずだ。欲しいものが無いはずはないのだ。
そうやってあなたは、欲しいものを尋ねるだろうか。


あなたの愛する人は、上のどちらの方を嬉しいと感じるだろうか。
指輪が、もしかするとちょうど愛する人の好みに合う品物かも知れない。それはとても良い結果となる。でも、あまり好みでは無いかも知れない。仮に気に入らないものだったとして、御礼を言われなかったら貴方は不満に思うのではないだろうか。せっかくプレゼントしたのに、御礼も無いのは失礼ではないかと思うのではないだろうか。
欲しいと言われたものをプレゼントすれば、愛する人は喜ぶだろう。御礼も言われるに違いない。でも、特に欲しいものが無いかも知れない。生きるために必要なものは揃っているし、あった方が良いものはあるけれど、かといって無理して手に入れるものでもない。それをもらって、本当に嬉しいのだろうか。

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今日、遠くに住む友人から小包が届いた。
とてもとても嬉しいものだった。僕には、ちっとも思いつかないものだった。ひと時の笑顔がリビングに溢れた。いつでも思い出し笑いできそうなほどだ。
手紙が添えられており、そこには次のような文章があった。

自分ができる支援っていうのは、少なくとも自分の大切な人、その人の家族だけでもほんのちょっとでも幸せになれることを探すことではないかと思うようになった。

手紙全体から、友人の悩みと苦しみ、そして僕への精一杯の気遣いが伝わってくる。
胸が熱くなり、こみ上がるものを抑えきれなかった。
これほど嬉しい贈り物は初めてだった。

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物事には順序がある。
あなたが誰かに何かを贈るとき、最初にあなたがすべきことは、その「誰か」のことを精一杯考えることだ。精一杯考えたうえで、分からなかったら聞くしかない。聞けなかったら、今手元にあるものを贈るしかない。
順序が後ろになるに従って、贈った相手の喜びは少なくなる。順序を守る人は、きっとそのことを理解しているのだ。だから、精一杯、自分の限界まで、贈る相手のことを真剣に考え続けるのである。


全国の皆さんが、被災地へ向けて自分に何ができるかを問うているのはよく分かる。
しかし、手元にあるその新品同様のものを送る前に、何が欲しいのかを尋ねる前に、もう少しだけ相手のことを考えてみてほしい。あなたが被災地と思っている場所と、そこに住んでいる人のことを考えてみてほしい。
答えは人それぞれのはずだ。そしてきっと、その答えは相手をとても喜ばせるだろう。
なぜなら、一番の贈り物は、その「考える」という行為そのものにあるのだ。