Hang In There

蔵王の麓で新聞屋さんが子どものこととか震災のこととか思い出などを綴ります

弾けて踊れ


祭りだ。息子が、故郷の祭りに参加して弾けるように踊っている。20数年前と同じ音楽、僕が通った道。今、また息子が踏みしめている。
息子の後ろで一緒に踊った妻がこう言っていた。
「毎年同じようにやっていた祭りができない地域がある。去年参加したお祭りに今年は参加できない人がたくさんいる。そう考えると涙が出そうだった」


「いつも同じようにやる行事」は、往々にしてその価値を失われがちだ。伝統と呼ぶには日が浅い。時代が変わり人が変わると、始まった当初の想いと現実が乖離してくる。一方、中には価値を高め続ける行事もある。毎年当事者となる世代が創意工夫を凝らし、変化を与え続け、文化となる。但し、それは本当に限られた一部のものだ。
「いつもと同じ」は、失って初めてその価値に気づくことになる。震災の後、いったいどれほどの人がその価値に気づいたことだろう。僕も同じだ。いつもの、普通の、変わらないことの価値に、僕らは全く気づいていなかった。


地域の復興には、次のような要素は欠かせない。

  1. それぞれの地域に育まれた伝統の文化を、未来へ継承すること
  2. それぞれの時代に生まれる新しい文化を、伝統に吹きこむこと

震災を生き延びた人々によって伝統の文化を継承しながら、震災によって変わってしまった現実を受け入れ、技術の進歩を取り入れ、新しい文化として吹きこみ変化させていく。


息子は僕を発見すると、満面の笑みを見せながら飛び上がって踊っていった。この笑顔を守り、次世代へ継承する。明日生まれる新しい生命も、躍動する祭りの楽しさを十分に味わって育って欲しい。街並みが変わり、服装が変わり、踊り方が変わっても、祭りの醍醐味は変わらない。