Hang In There

蔵王の麓で新聞屋さんが子どものこととか震災のこととか思い出などを綴ります

実は敗北していたもの

昨日は、白石市の経済界を代表する酒好きのオジサマ方との懇親会があり、ヘベレケ状態だったためブログどころか記憶も曖昧という失態をば。日本酒をさんざん飲んだため仕方ないとは思うものの、全く不甲斐無い。しかし、思ったより酷い二日酔いではなく、酒の前にいただいた実に美味しいお蕎麦と、それからゲストの方が持参してくれた日本酒の上品さがなせるワザかなと勝手に推測。ええ。次から僕と日本酒を飲みたい方は、美味しいお蕎麦と高級日本酒を用意すべしである。



娘は最近、ぬいぐるみや息子が使ったウルトラマンなどのビニル人形でよく遊ぶ。しかも、寝室に連れていきタオルケットを掛けるなどして寝かしつける仕草をしたり、この写真のようにおんぶをしたりする。もちろん、保育園での先生の行動を真似ているだけなのだが、息子とは見ているところが違うなあとしみじみ思う。やはりそこは女の子なのだろうか。性差って1歳半のころからハッキリするとは思っていなかった。まだまだ親としても未熟者ですね。日々修練。


今日書きたいと思っていたテーマは、実はひどく重い。原子力に関してだからだ。

土曜日の夜、ツイッターで知ったこの動画をじっくりと観て、改めて考えたことがある。
教育についてだ。


「スゴイね!僕は数学だけはダメだったよ」僕が数学科卒であることを伝えると、9割方の人はこんな風に言う。新聞関係者や地元で活躍する経営者の皆様ならまだしも、理系が多いだろうと思えた前職場でもそんな反応ばかりだった。多くの方は、数学が苦手で、あるいは嫌いで、消去法的に文系を選択していた。大げさに言えば、日本は文系と理系に分かれているのではなく、「数学ができる人とそうでない人」に分かれている。数学がほんの少しできた人の中で、理系分野に夢を見出した人だけが理系学科へ進学する。数学ができなかった人と、数学はできるけれど目指すものが文系分野だった人が文系学科へ進学する。そんな傾向は未だに根強いのではないだろうか。
福島第一原発事故が発生して以降、原子力放射能放射性物質放射線原子力発電・被ばく・放射線医学、そういった完全なる理系分野の事象に関して、誤解や思い込み、間違いがこのインターネット上にも溢れかえっている。マイクロやミリという単位の関係性にすら拒否反応を示す人もいる。ダメ学生だったけれど、一応数学の教員を志し、少なからず物理や化学なども勉強した僕にとっても十分には理解できないことが多い。ましてや数学や理科を拒絶してきた人々が、拒否反応を示すのも致し方ないと思う。
そういった人々が、権威的な人間、すなわち立派な大学の科学者であるとか、長年ある活動に従事してきたとか、そういう人間の発言を拠り所にし、自分の意見として取り入れる。「あの人がああ言っているから正しい」。今回、こうした権威的な人間の間でも見解が分かれる場合がままあって、彼らの意見を信じていた人々は混乱に陥っている。
原発の推進も廃止もどちらにせよ、あと数十年、あるいは百数十年というスパンで、現在(稼働中か停止中かは問わず)日本に存在する原発とは付き合い続けなければならないことを、いったいどれだけの人が理解しているのだろう。100%確実に、今ある問題は次世代に負の遺産として遺すことになり、その長い年月の中で今回と同レベルの大地震と大津波使用済み核燃料プールを襲う可能性を、いったいどれだけの人が理解しているのだろう。


僕は、これは教育の敗北だと思う。これまで日本を支えてきたはずの、教育システムや教育を取り巻く環境の敗北だと思う。
数学が苦手なら無理することは無い、得意な分野で頑張ればいい。それもまた一理あるだろう。でも、この日本を支えている原子力発電の仕組み、そしてそのリスクを正確に理解していなければ、いち国民として行政の良し悪しを判断できるのだろうか。これから生まれてくる子どもたちの中に、こうした原子力工学に熟知し、負の遺産の処理に一生を捧げようと志す人間が、いったいどれほどいるのだろう。ゼロになった瞬間、日本の命は風前の灯火となる。いずれ、千年に一度と言われる大地震や大津波が、十分な対策を怠った使用済み核燃料貯蔵庫を襲い、膨大な量のプルトニウムが日本中、そして近隣諸国と海中に拡散する。
大げさだと思いますか?


原子力発電所を国内に保有する国の国民として、最低限の物理学の知識を得ることは義務であると思う。そのために教育をどう変えなくてはいけないのか、それは十分に議論されなければならない。そしてもっと大切なことは、今生きている人間も学ぶべきということだ。でなければ、どんなに教育システムを変えようとも本当の意味での有効性が得られない。国全体が物理学に親しむことが大切なのだ。高齢者でも多忙な人でも関係がない。


ということで、密かに物理の書籍でも買おうかと思っている。ささやかだけれど、この一歩から始める以外ないことだし。