Hang In There

蔵王の麓で新聞屋さんが子どものこととか震災のこととか思い出などを綴ります

砂の上のベンチウォーマー

僕は実はですね、こう見えてもサッカー少年だったんですよ。今は見る影もないのだが。


あれは確か小学4年の終わり。学校で配られたサッカー少年団団員募集のプリントを見て、僕はktkrーーーー!!!と思った。小学3年生から続けていた書道教室はいささかうんざりしていて、やめるきっかけが欲しかった。喘息でたびたび学校を休む僕に、両親はいつも「体を鍛えなさい」と言っていたから、きっと賛成するはずだった。しかも、休み時間に仲の良いクラスの友達と話していたら、野球をやっている子以外はほとんどみんな入るそうじゃないか。野球は苦手だけれど、それに比べればサッカーの方がずっとやっていて楽しい。じゃあ僕も入ろう。


翌週、両親に背中を押されて申込書を持参し学校へ向かった。ところが、クラスで申込書を出したのは僕一人。結局、あまり遊んだことのない他のクラスの友達と一緒に入団することになった。その中には幼稚園時代を共に過ごした幼馴染もいたのだが、僕はとても不安で、やっちまった感の中練習会場である隣の小学校へ向かったのだった。


それからというもの、ずっと補欠ではあったが、小学校を卒業するまでの2年間、毎週日曜日をサッカーボールと過ごした。楽しかったかと言われると正直答えが難しい。チームメイトとは仲良くやっていたし、コーチや友達の親も優しかった。一方、練習が嫌だったこともあったし、一人試合に出られなくて悔しい思いもした。
それでも、あの砂のグラウンドで覚えたことは数限りない。仲間と力を合わせることの楽しさと大切さ、勝つ喜びと負ける悔しさ、点を決めたときの感動。それらが今、僕の心にとてつもない糧となっている。


息子が4月からサッカー少年団に通うらしい。
別にうまくなくても良い。良い仲間や良い経験に出会って欲しい。いつかの僕のように。