Hang In There

蔵王の麓で新聞屋さんが子どものこととか震災のこととか思い出などを綴ります

新聞配達しようか?

最近、息子は右足の裏あたりを痛がっている。
僕は、成長痛のようなものでじきに回復するかなとは思っているけれど、本人も痛みを堪えるのが辛いらしく、少なくとも足に負荷がかかるサッカーの練習は休むことにした。もう少し続くようなら病院に行ってみようと思う。


ところが息子はフラストレーションが溜まっている。元々、体を動かさないとフラストレーションが溜まってしまうから、サッカーなり新体操なりに通わせた経緯があって、息子もそういったところで十二分に体を動かすことに自分なりに楽しみも感じていた。それが行けないとなると、どうやって体を動かそうかということになる。


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昨晩、「じゃあ筋トレやってみるか」と言ってみたが、すぐ後悔した。お父さんも一緒にやって欲しい!となってしまったからである。いや筋トレ自体は僕もやった方が良いし悪くないんだけれど、翌朝早起きしないといけないお父さんとしては嫁さんと協力してなるべく早めに家事を済ませて睡眠時間を確保したく、筋トレに付き合わされるのは時間的なロスが痛いのだった。


そこで、うーむと考えて息子に言ってみたのが「新聞配達しようか?」だった。
いや直ぐに断られると思っていた。何しろ朝はいつもより2時間以上早く起きないといけないし、比較的朝が弱い息子はあまり気が進まないんじゃないかと思ったからだった。
ところが反応は180度違った。息子はどうしてもやってみたいと言い、入浴後は歯磨きなどを済ませて早々にベッドに潜り込んで寝てしまった。これは逆に起こさないと怒られるパターンだなと思い、まあ4時頃に起こしてみて、きっと起きないだろうから、その後は一人で配達しようと思っていた。


甘かった(;´Д`)


4時に息子のベッドへ行き「配達するぞ」と言うと、何といつものグズグズが一瞬で吹き飛んで覚醒。別室に準備していた着替えを素早く済ませて配達に同行してくれたのだった。
僕の車の後部座席に乗り込み、僕が右の家や左の家と指示するとその方向のドアから飛び降り、貸したLEDライトを照らしてポストまで僕についてきてくれた。ポストが低い位置にある家の場合は、息子に新聞を渡して投函させてみた。新聞の持ち方やポストへ入れる方向など、「こう?こうで良いの?」と小声で僕に確認しながら投函を終えると、車の中で「入れさせてくれてありがとね」と言ってくれた。
凍結している場所では何度か滑ったものの、そこは持ち前の運動神経で怪我をすることもなく立ち上がり、「ごめんごめん」とニコニコしながら僕に追いついてくれた。
終わったあと、「どうだった?」と尋ねると、「いろんなお家を見られて楽しかった('∀`)」と言っていた。


車が全く走っていない、真っ暗な町。テカテカに凍ってる地面。全く見ず知らずの家々のポストに新聞を入れること。全てが新鮮で、全てが楽しそうだった。僕に必死についてきて、時には転び、時には新聞を入れ、時には空の星を眺めてみた。圧雪よりも雪が残っている場所の方が滑らないことや、人が近づくと自動的に点灯するライトがあることなどを体で感じた。


そして正直、暗い中を息子と一緒に配達できて、僕自身が楽しかった。


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自営業のメリットの一つに、親のやっている仕事を子どもに見せられるチャンスがある、という点はあると思う。でも正直なところ、僕は親が新聞配達をしているところを見たことは無かった。小学校高学年の頃に新聞配達をさせられたけれど、辛くて辛くて仕方がなかった。
また、「親の背中を見せる」という言い方をされることがある。子どもに親の背中を見せることが教育上とても大切なことだと、色々な人から言われたような記憶がある。


でも、どうやら今回の僕のスタンスは違った。今回は単なる「遊び」だ。
それは息子のスタンスでもある。息子は親の仕事を見たかったのも少しあっただろうし、親の背中を見たということにも少しはなったと思うけれど、でも今回配達に付き合った主な理由は「好奇心」であり、そして「好奇心が充足」という結果を得たということだろうと思う。それ以上でもそれ以下でもない。


ちょうど米澤さんがこんなブログを書いていた。奇遇だなあと感じると共に、今日ボクが感じたことがそのまま書いてあった。
http://ameblo.jp/taokwd/entry-11476760890.html


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きっと、第三者から見る以上に、自営業というのは生活と仕事が密着している。特に新聞販売などという休みが限られる仕事は尚更だ。だから、わざわざ自分の仕事を子どもに見せようとか、背中を見せるんだと格好をつけるのはとても不自然。毎日毎日淡々と続く仕事を自分自身が懸命にやっていること。子どもが少し興味を見せたなら構えることなく一緒に連れていけばいいということ。子どもと一緒に楽しむこと。親が一人になってしまう生活の中の一瞬を、少しだけ子どもと一緒の時間にしてみる、そんな感覚。


それができるってことが、自営業の大きなメリットなんだなあと思う。